第5章 君の魔法【フィンセント・本編ネタバレあり】
「フィンセント、行こうっ」
俺の手を引いて、あなたは微笑う。
俺達は………、『スイゾクカン』に来ていた。
「待って、アズリ。少しだけリボンが乱れてる………。」
さらさらと滑らかな髪に触れて、曲がっていたリボンを結び直して。
「あ、ありがとう」
すこし恥ずかしそうに頬を朱染めて、俺を見つめる。
「行こう………、イサラ」
差し出した手を、彼女はぎゅっと握った―――。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
チケットを買って、ふたりで館内を回る。
「見て………、可愛いっ」
俺が見たいと言ってた『ぺんぎん』も、彼女は覚えてくれていて。
「ふふ………。本当だね」
(『ぺんぎん』を見てるあなたの方が可愛い………なんて言ったらあなたは怒るかな?)
無邪気に微笑う彼女は、囚われた当初よりも眩しく綺麗で………。
俺には勿体ないくらい気高く芯が強い。
そして、その優しさにどれだけ救われたかわからない。