第4章 片恋ワルツ【アーサーBD企画様参加SS】
「ねぇ。子爵となにを話してたの?」
「伯爵の様子を聞かれただけ。それ以外は………なにも話してないよ」
そっと微笑って、軽やかにターンする。
「みんなあなたのこと見てるよ………、アーサー」
悪戯に呟く彼女を、ぎゅっと抱き寄せた。
「っ………アーサーッ?」
「みんなが見てるのは………キミだよ。俺じゃない」
真剣な声音だったのに、彼女は微笑んだ。
………きっと、本気にしていないのだろう。
「私は綺麗じゃないし、きっとアーサーの―――んんっ!」
言葉を遮るように、キスを交わす。
ややあって唇を離すと、彼女は頬を朱染めていた。
「キミは、自分のことが全然見えてない。
だからこそこんなに―――。」
『キミに惹かれてしまうんだ』―――その言葉を喉奥で封じた。
「………?」
不安げに瞳を揺らす彼女に、彼は微笑って見せる。
「なんでもない。だからキミは、そんな顔しないで」
顎に添えた手。その指先で唇をなぞった。
腕の中に囲いながら、目の前の人を思考に載せる。
気高く芯が強くて、そして誰よりも優しいキミにどれだけ救われたかわからない。
その笑顔を曇らせないために、ずっと傍にいるよ………。
声には載せられぬ想いを込めて、彼女を抱きしめていた………。