第10章 新しい筆のおろし方03 /口づけの意味04
御殿に戻りながら
「家康、ごめんね…?なんか変なことしちゃって」
「いや別にいいよ。いい牽制になっただろうから」
「え?」
「いやこっちの話。あの人たちは葵のこと揶揄いたくて仕方がないだけだから、気にしないでいい」
「…うん」
少し不機嫌そうに目線を前に向ける横顔を見ながら
家康、綺麗…
鼻筋、顎、首筋から目が離せない
男の人で綺麗だと思える人は今までいなかった
あんなこと教えてくれるっていうから、どうなることかと思ったけど
私に合わせてくれてるのかな?
人肌になれるというよりも家康の体温に心地よさを感じるようになっていた
やっぱり男の人なんだよね
細いと思ってたけど、抱きしめる腕や胸は私とは全然違う
頼りなさなんて全然ない
強くて優しくてこんなにかっこいいのに…
女性の話を聞かないのはなんでだろう
もてるって話も聞いてる…
私が知らないだけなのかも
家康が選ぶ人は素敵な人なんだろうな
私にこんなこと教えてるなんて、言えないだろうし
真面目な家康のことだから、この期間中は会わないことにしてるのかも
多分私の知らないところで家康に迷惑かけているはず