第17章 真実
~菅原side~
搭乗手続きのアナウンスが流れる。
俺の乗る便だ。
椅子から立ち上がりキャリーを手にゲートへ向かう。
あの文化祭の日から4ヶ月、
俺は久瀬に一度も近付かなかった。
『テメェが今まで瑠衣にやったこと全部忘れる。無かったことにする。だから二度と近付くな』
あの時青峰と交わした約束を俺はきっちり守ってしまったわけだ。
あんな奴大嫌いなのに。
そもそも、今回のことは全部アイツが発端だったんだ。
俺が小学校に転校してきたばかりの時。
隣の席の久瀬を好きになった。
向こうも楽しそうに会話していて、あの頃の単純思考な俺は両思いだと思い込んでいた。
久瀬と一緒に帰る青峰の姿を見るまでは。
アイツといる時の久瀬は俺といる時の何倍も楽しそうだったんだ。
好きなんて、そんな簡単な言葉で表せる気持ちじゃない。
もっと禍々しい、自分勝手で見苦しいものだった。
青峰の隣にいる久瀬を見たとき、嫌だと思ったのは青峰ではなく久瀬だった。
久瀬の横の「青峰」じゃなくて、青峰の横にいる「久瀬」に、俺の感情は嫌悪を示した。
どうして俺じゃない奴の隣にいるんだ、と本気で思ってた。
いつの間にか久瀬を俺の所有物のように見ていたんだ。
その時点で、俺の気持ちは恋なんてモンじゃなかった。
……それでも、
「…好きだった」
あの優しい笑顔が大好きだった。
何年たっても忘れられなくて、あの笑顔をもう一度見るために日本に戻った。
…やっぱり俺には笑いかけてくれなかったけど。
一方的で自分勝手な告白を聞いてくれた。
こんな俺に告白をさせてくれた。
青峰、久瀬、ごめん
ありがとう
本当にありがとう