第11章 優しさ
「ハァ…ハッ…っ」
何で…どうしてこんなところにいるの…!?
菅原くんとはもう二度と会わないと思ったのに…!
私は必死に走った。
彼が帰って来てしまった以上、私が彼から遠ざかるしかない。
逃げなきゃ。
逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げなきゃ…!
私はもう、あの視線に耐えられない…!
「瑠衣!」
ぐんと腕を引っ張られ、後ろに倒れ込んだ。
誰かに支えられる感覚に顔を上げた途端、泣きそうになった。
「大輝…!」
「…おい、何で泣きそうになってんだよ。やけに必死に走ってたし…どうした?」
戸惑った表情をする大輝に縋りつき、事の経緯を話した。
全て聞き終わった大輝は、一つ息を吐き頭をかきむしった。
「菅原漣か…あいつアメリカから帰ってきてたんだな」
「そうみたい…でも、こんな所で会うなんて…」
「…やっぱ今でも、菅原の顔も見たくないか?」
「…勿論」
固く握り締めた手が震えた。
3年前、小学五年生の時、
私は菅原漣に出会った。
そして彼は、私の生活を変えていった。