第5章 濡羽色(ぬればいろ)
その手が俺の手を掴んだ。
そのまましばらく動かない。
「…どうしたの?」
ごくりとつばを飲み込むと、大野さんは俺を見た。
掴んだ手の平を顔に引き寄せると、ちゅっとキスをした。
じわり、そこから大野さんの熱と快感が伝わってくる。
「…もっと…」
「え?」
「もっと…したい…」
いいの…かな…?
これ以上って…そういうこと、だよね…?
「ほんと…?」
「うん…」
俺も大野さんの手を取って、手のひらにキスをした。
にっこり笑って、大野さんは俺に抱きついてきた。
俺もぎゅっと抱きしめて、大野さんをマットレスにそっと寝かせた。
じゃあ…遠慮なくしちゃうぞ…?
しちゃうぞって言っても、どこまでやっていいのかなんてわかんないけど…
上から大野さんを見下ろした。
いけるとこまでいってやろう
「…忘れさせてやる…」
なんだかわからない熱いものが、胸の奥にこみ上げてきて。
大野さんの頬にそっと触れた。
少し驚いた顔をした大野さんが、また笑ってくれた。
「うん…」
潤んだ目が、そっと閉じられた。
またキスを落として。
キスしながら、スエットの上着を脱ぎ捨てた。
大野さんもそれを見て、服を脱ぎ捨てた。