第5章 濡羽色(ぬればいろ)
「大野さん…?」
震えてる…?
小刻みに揺れる身体を振り払うように頭を振って、ぎゅっと目を閉じた。
呆然と大野さんを見てると、震える手を潤くんに伸ばした。
「ごめん…松潤…」
「いや…大丈夫だけど…ちょっと、本当に真っ青…」
翔ちゃんが握っていた手を外すと、遠慮がちにその手を取った。
「どっか、痛かった?大野さん…」
「いや…違う…ごめん…」
「おーちゃん…どうしたの…?」
相葉さんが立ち上がって、大野さんの後ろに立った。
肩に手を置くと、またびくっと大野さんは震えた。
「え…ちょっと…?智くん…?」
「どうしたのよ…」
翔ちゃんと俺も、大野さんの伸ばした腕に触れた。
やっぱり、震えてる…
「なんでも…ない…」
「なんでもなくないだろうが!」
潤くんが強く言うと、身体を硬くした。
「どうしたんだよ…?」
ぎゅっと口を閉じて、俺たちの方を見ることもしない。
「…もう大丈夫だと思ったのに…」
そう呟くと、大野さんは立ち上がった。
後ろに立ってる相葉さんにぶつかるように、個室を飛び出していった。
「ちょっとっ!待ってっ…」
「トイレっ…すぐ戻るからっ…」