第5章 濡羽色(ぬればいろ)
「カンパーイ!」
5人だけの個室で、俺たちの誕生会が始まった。
みんなでグラスを合わせると、旨そうにビールを飲み干した。
「…こんなの久しぶりだねっ」
相葉さんが妙にはしゃいでる。
「まあ、ゆっくりしようよ…」
「さ、さ…智くんどうぞ…」
「うん…」
瓶ビールで翔ちゃんが大野さんにビールを注ぐと、また大野さんはビールを飲み干した。
「どうしたの?喉、乾いてるの?」
「別に…」
相変わらず無口で…普段から余計な事は言わないけど、最近は特になんにも言わない。
リハーサルもだいぶ進んでて、もう幕張でセットを組み立てての総合リハも近い。
いつもだったら、だんだんエンジンがかかってきてフルスロットルになる時期なのに。
みんな、そんな大野さんを、何をいうわけでもなく見守ってるけど…違和感は感じてるみたいだった。
「あれでしょ…おーちゃんもう年だもんね?」
相葉さんがわざとからかうみたいに言い出しても、薄く笑って乗ってこなかった。
「あー…料理さ、勝手にコース頼んどいたから…」
潤くんがそういうと、個室に店員さんが入ってきて、料理を並べ始めた。
大野さんの様子が気になったけど、なんだかんだで酒も回ってくるといつも通り、時が過ぎていった。