第3章 再会
「ねえ、フランスってどんなところ?」
「どうしてフランスに住んでたの?」
「彼氏は?」
「好きな人とか!」
ホームルームが終わり、始業式に移動するまでの時間、みさとはクラスの女子から質問攻めに遭っていた。
するとみさとは申し訳なさそうに何もわからないのだと答える。
「でも、家族のことはわかるでしょ?みんなで引っ越したんだろうし。」
1人の女子が信じられない、という風に尋ねる。
みさとはまた、わからない、そう答えるだけだった。
皆、何を聞いても「わからない」と答える彼女に戸惑いを隠せなかった。
「でもね…」
みさとは小さく呟いた。
その声を聞き、皆続きを促すように静まり返る。
「よく見る夢があるの。あれはきっと…幼い頃の記憶…なんだと思うの……」
「夢」その言葉に離れた場所で聞き耳を立てていた幸村は反応した。
「どんな夢?」
気になったのは幸村だけではなかったらしい。
そう尋ねられると自信なさげに語り始める。
「いつも公園でね、同い年ぐらいの男の子と遊んでるところから始まるの。まだまだ遊び足りないのにお迎えが来て、次の日には私が何処かに連れて行かれちゃう夢。その時に男の子と何か会話をしてるんだけど思い出せないの……」
夢の話が始まるとクラス全員がみさとの話に耳を傾けていた。
フランスに引っ越した時の記憶なんじゃないか。
その男の子は初恋の相手なんじゃないか。
それってもしかして……
いろんな声が飛び交う中で、最後の言葉がやけに教室に響いた。
そして全員の視線が1人に向けられた。
視線を向けられた当の本人は悲しげな、寂しげな表情でみさとを見つめ、声を発することはなかった。