第5章 名前の無い花魁
女「そうね…今になってはそう思える。でも昔は、吉原はとても楽しく過ごせるところだと思ってた。いい着物が着れる、おまんまがお腹いっぱい食べれる、優雅で楽しい時間が過ごせる…そんな場所と思ってた」
女「だけど、現実は違う!。着物はいい物着れるけど自分で買わないといけない。おまんまなんてお腹いっぱい食べられない。優雅じゃない、楽しくもない時間を過ごす…地獄の時間を過ごしてるのよ、私達は!」
その女は泣き崩れていた
女「どこがっ…優雅よっ…地獄に自分から来た人じゃないのよっ!」
莉奈はそっと女に抱きつく
『吉原なんて優雅じゃない…ただの地獄…綺麗に咲いていた花が枯れていく…吉原に来た女も綺麗だったはずなのに心が枯れていく…そんな感じよね?…私はココに売りとばされた、私は最初から吉原が地獄だって知ってた、だから嫌だったの。でも家族の為だと思うと不思議に来れたの』
女「家族…そんなの家族じゃない、家族をこんな地獄に売り飛ばすやつなんて家族じゃない!」
女は必死で莉奈に訴えてるようだった
顔を見てみれば涙が沢山溢れていた
『そうね…家族じゃないのかもしれない…でも、私は家族と思ってるよ、これがあるから…』
そう言うと莉奈は腕を見せた
女「ブレスレット?」
『うん、親が御守りって言って最後に付けてくれたの』
女「…でもそんなの渡したって吉原に売った事は大罪よ。」
『そうねぇ、私が住んでいた村はね皆貧しかったの、だから日に日に消えていく女に不思議に思ってお母さんに聞いたの、そしたらお母さんは吉原に行ってるんだよって答えたの』
『私は吉原のことを知らなかったからどんな所か聞いたの、そしたらねお母さんは、とても綺麗なところで女友達が沢山できて、豪華な着物が着れて、沢山のご飯が食べれるって聞いた…お母さんは嘘をついていた、それを知ったのは14歳の頃…』