第5章 名前の無い花魁
『名前が無いってどういう事?』
女「そのままの事よ、私は生まれた時から誰にも名前をつけられていない」
『…詳しく教えてくれる?』
女「別にお前さんにならいいだろう…」
女は話してくれる
女「あれは、昔の事だ…私がものごころついた頃には周りには誰もいない所にいた、どこに行っても誰もいなかった。お腹も空いて木にぶら下がっていたリンゴとか、木の実を食べて耐えてきた、3日ぐらいしたらある家があったんだ…」
女「その家に助けを求めれば優しいおばあさんで助けてくれた。ご飯をくれて着るものもくれて、お風呂にも入れさせてもらえた…あのおばあさんは私を自分の孫のように扱ってくれた」
女「あの、おばあさんは私にとっては神様と同じにも見えていた…あのおばあさんがいなければ、今私はこの世に存在する事自体無理だっただろうね…」
女「私が十歳になった時だ…いつも通り昼ごはんを食べていたら、おばあさんが私にこう言ったんだ…
''お前は生まれた時に捨てられたんだ、お前の親とは仲が良かったからねぇ…お前の親は村では仲良し夫婦と評判だった。だけど、おまえが生まれるのは想定外だったんだろうね…私のところに引き取ってと一度来たんだよ。でもこんな老人が赤ちゃん見るなんざ無理に決まっていて、無理と言ったんだよ''
''その後は知らんが、お前は物心ついた時ぐらいに私のところに辿り着いたんだよ…これはもう私が育てるしか無いんだと思って引き取ったんだよ…よく生きていたな」
女「そう言って私を優しく抱きしめたの…でもおばあさんはお金に苦しかったんだよ…だから私は色々な所で働いた。でもお金がついていかないの…だからいっぺんに稼げるこの吉原でいいと思った…だから私が14歳の頃に吉原に自分から行ったんだ。それで今がこれ…」
女「あのおばあさんは今はもういないよ…あの人は私にとってお母さんと一緒なんだよ」
『そうなんだ…初めて知った…自分で吉原に来るってすごいじゃない』
莉奈は涙を流しながら言う