第2章 奇妙な関係 【一松】
最近妙に絡んでくる女がいる。
童貞の俺からしてみれば、こんな有り難い事は無いんだろうけどなんせ相手はアカツカ商社勤めの美人ときた。…いやいや、何処からどう見ても俺みたいなクソニートなんかとは釣り合いませんから…。
そんなこんなで今日も俺は陽射しから逃げるべく、路地裏で猫に飯やり中。傍の猫を抱き寄せて膝の上へ乗せると、眠たいのか船を漕ぎだした。……あ、…噂をすれば…。
「いーちーまーつくん!」
声のする方へ視線を向けると光の差す大通りから此方を覗く女の姿。…あーあ、まるで俺とあんたみたい。こっち側はあんたの住む世界じゃありませんよ…、なんて。
「あ、猫ちゃん良い所でお昼寝してるね。」
「………。」
「こっちの子はお腹見せてる。」
「………。」
「そうだ、猫缶持ってきたんだけどちょっと遅かったね。今度はもう少し早く来るようにするよ!」
そんな会話にもならない状態が続くも彼女は、楽しげに言葉を発し続ける。…何がそんなに楽しいんだか、…俺と居ても時間の無駄にしかならないのに。
「…ねえ、…つまらなくないの。」
今日初めて彼女に向けた言葉がこれだ。兄弟たちの方がまだまともな声を掛けられる筈だ。…すみませんね、あんたの隣にいるのが俺で。
「…へ?…そんな事ないよ。私は一松くんと話がしたいから此処に居るんだし。…心配性だなぁ。」
そう言って戯けた様に笑う笑顔が俺には眩し過ぎて、勿体無くて思わず視線を逸らす。いや、本当になんなんだこの人。女神なのか。今地上に降り立った俺だけの女神様か!!
そんな事を脳内で考えている今も、彼女は隣で何食わぬ顔して猫を撫でている。…俺もその、柔らかな手で撫でられたい。生きてるだけで偉いねって褒められたい。
そんな懇願じみた視線に気付かれたのか、不思議そうに此方を見た彼女が俺の頭部へ手を伸ばす。
「…あ、」
柔らかな掌で、緩慢に撫でられると羞恥から顔が赤くなり、今この記憶を永久に保ったまま消えて無くなりたい一心で、膝の猫を見つめる。
「ふふ、…撫でて欲しそうに見てるんだもの。」
「…そんなこと、…な、…無いから…」
「でも、嫌がってないし、触り心地いいし猫みたいだね、一松くん。」
アーーーッ!!そんな優しい顔で俺を見ないで!駄目だ、このままだと脱糞してしまいそうだ…ッッ!!!
