第1章 不器用な恋 (家康×舞) R18
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乱れた呼吸が、漸く落ち着いてきた頃。
顔を埋めたまま動けずにいる俺の背中を、舞がそっと抱きしめた。
驚いて、身体がビクリと震えてしまう。
「家康、あのね、聞いてほしい事があるの…」
「っ、そんなの…聞きたくない…」
覚悟を決めた筈だった。
すべてを失っても、構わないと。
それなのに、口をついて出たのは、情けない言葉。
あんたの温もりを失いたくないと、強く願ってしまう。
けど。
そんなの、許される訳がない。
あんたを傷つけたんだから、今度は…俺が覚悟を決める番だ。
「わかってる。あんたが三成を好きだって事。だから、忘れる。今日のことは全部…忘れる」
「だから、あんたも今日のことは忘れて…三成の所へ行けばいい。」
精一杯の強がり。
そんな俺をギュッと抱きしめたまま、舞は離そうとしなかった。
「っ、舞………?」
「家康、酷いよ…。私の話、全然聞いてくれないんだね。」
「……………っ」
「私が三成くんを好きだとしても、家康には関係ないでしょ。なのに、なんでこんな事するの?どうして、そんな…辛そうな顔するの…?」
「そ、れは…………………。」
あんたの笑顔を独占してる三成に、どうしようもなく嫉妬した、なんて…言えるわけない。
あんたは俺のものじゃないのに。
俺は、あんたには相応しくないってわかってたし、だからこそ、必要以上に近づかないようにしてた。
けど本当は…
心の中でずっと、ずっと…願ってた。
あんたの眩しい光に照らされながら、あんたの笑顔を独りじめしたいって。
「そんな事、あんたが一々、気にする必要ないでしょ」
「気にするよ…!!!」
「っ、なんで!!!」
「だって…っ!!だって…私が好きなのは、三成くんじゃなくて、家康…だから…っ!!」
「は?何言って………」
「好きなの!!家康の事が…。だから…お願いだから…!忘れる、なんて言わないでーーーっ」
舞の言葉に、思考が停止する。
舞が、俺を…好き?
「家康が、好き…。大好き…」
何も答えられずにいると、舞は俺に言い聞かせるように…何度も好きだと呟いた。
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