第1章 不器用な恋 (家康×舞) R18
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軍議が終わり、帰路に着く前に立ち寄った書庫。
前々から探していたお目当ての本が見つかり、手にとってパラパラとめくっていると、遠くから何やら話し声が聞こえてきた。
「それでね!その時に見つけた本が凄く珍しくて、三成くんに教えたくて」
「なるほど…。それは楽しみです!」
この声は、舞と…三成?
和気藹々とした、楽しそうな話し声に眉を寄せる。
三成が舞を独占している事に苛立ちを覚えながら、
(舞の笑顔は、お前のものじゃない)
胸の中で呟いた。
会話の内容からして、二人の目的地はここのようだ。
家康は、はぁー、と盛大な溜息をつく。
よりによって三成と一緒だなんて。
「あいつにだけは、関わりたくない…」
関わるとろくなことにならないと考えた家康は、書庫の奥へと歩みを進めた。
気付かれないよう、二人が去るのを待っていればいいと、そう思っていたのだけれど。
書庫へやって来た二人は、なかなか立ち去る気配がない。
(なんなの、あいつ。本当、迷惑)
少し近付いて、二人の会話に耳を傾けてみる。
「あれ…この辺にあったと思うんだけど…」
「見当たりませんか?では、別の棚かもしれませんね」
「でも、確かにこの辺に…」
一生懸命背伸びをして、高い位置にある本を取ろうとしていた舞が、伸ばした本に触れた瞬間。
ガタガタっと崩れるように本が降ってきた。
「っ、舞様…!!」
「きゃあーーっ!!」
大量の本がバサバサと落ちてきて、二人はあっという間に本に埋め尽くされた。
(はぁー。最悪。流石に見てられない)
このまま黙って見ているのも気が引けて、助けようとしたのだけれど。
次の瞬間、ピタリと足が止まった。
三成が、舞を抱きしめていたのだ。
しかも、かなり力強く。
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