第9章 愛の夢
こんな些細な刺激なのに、躰中にゾワゾワが渦巻く。
智の舌が触れる度、ピクリと跳ねる躰…
どうにか抑えたくて全身に力を込めた。
そうすると背中が仰け反って、胸を突き出す形になるから智に執拗に攻められる。
恥ずかしい姿をさらしたくないのに…自分ではどうにも出来ない状態に抗おうとしているせいで、呼吸が乱れ苦しくなってきた。
「はっ、あっ、さと、し…待っ、て…」
智の頭を両手で押さえて動きを止める。
「なんで?気持ちいいんだろ?」
智が顔を上げて俺の方を見たから、漸くゾワゾワから解放された。
「も、無理…」
涙が滲み溢れそうになるのを耐えながら、首を横に振った。
「やり過ぎた?」
智が俺の瞼にそっとキスを落とす。
目を閉じたら、溜まっていた涙が溢れ出た。
智の首に腕を回しぎゅっとしがみつくと、智の手が俺の頭を優しく撫でてくれた。
次第に落ち着きを取り戻し、上がった呼吸を整える。
「ご、めん…」
俺が謝ると智は少し躰を離し俺の顔を見た。
「なんで翔が謝るんだよ…」
「だって…智の思った通りにしていいって言ったのに、俺…」
「それだけ感じてくれたってことだろ?」
「…うん」
「なら謝るなよ…俺としては嬉しいことだけど?」
「そうなの?」
「そりゃそうだろ。
男なんてな、抱いてる相手が感じて乱れてくれればくれるほど、嬉しいもんなんだから」
「俺が乱れた方が智、嬉しいの?」
「あぁ、勿論。好きな奴を自分が気持ちよくしてんだぞ?
そんな姿、目の当たりにしたら、こっちだって気持ちいいし、男冥利につきるってもんだろ。
だからもっと乱れろよ…」
智の熱を帯びた言葉と熱いキスが、俺の唇に落ちてくる…
その言葉とキスで俺の中の壁が溶けていく。