第1章 赤き秘めたおもい(顕如)
安土城の仲間には告げず、忍は
顕如と逢瀬をしている。
もしかしたらすでに気づかれているかもしれない。
しかし忍は顕如と、
こうして身体をつなげるのをやめようとはしなかった。
なぜなら顕如と身体をつなげている間だけは、
織田の姫ではなく、
ただの忍になれる喜びを知ってしまったからである。
お互いの身分は知っているが、
それでも身体をつなげている間だけは、
顕如も彼女が敵の妹であることを忘れて、
彼女を愛するのである。
織田の姫であることを捨て、彼だけのものになれたら。
織田の姫なんて捨てさせて、
彼女のナカに自分の欲をいっそそそぎこんでしまえたら。
そんなことを二人が考えなかったかと聞かれたら嘘になる。
でもそれができないとわかっているがゆえに、
身体をつなげている時だけ・・・
逢瀬をしている時だけ・・・
忍は顕如のものに、
顕如は忍のものになるのだ。
逢瀬が終われば敵同士に戻る。
兄を殺せば忍は泣くことになるかもしれない。
その時には、忍はどうなるのだろうか・・・
できれば忍には敵の姫ではなく、
愛する女として隣に立っていてほしい。
それがかなわぬのなら自身の手で
忍の命の時を終わらせてほしい。
そんな想いを秘めながら、
顕如は忍の唇に自分の唇を重ねるのであった。
終わり
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