第21章 扇月の夜(今川義元)
宴は終わり、
義元は寝衣をまとい、
部屋の中で静かに月を眺めている。
忍は一糸まとわぬ姿のまま、
褥の上で気を失い、眠っている。
義元はそんな忍の頬をなでる。
忍は身じろぎするが、
起きることはなかった。
義元「無理させちゃったね・・・」
その眼は美術品を見るときのような、
慈愛にあふれていた。
義元「謙信に怒られちゃうかな・・・」
そんな独り言を義元はもらす。
自分なら大丈夫・・・
そんな言葉を聞いた瞬間、
自分の中に炎がともるのを感じていた。
“来るもの拒まず去るもの追わず”
・・・そんな普段の自分が嘘のようだった。
まるで彼女に執着しているようなそんな劣情を、
一瞬で彼女に抱いたのだ。
そして自身のモノを、
忍のナカに挿れた瞬間、
その劣情はさらに激しくなった。
義元「名器ってやつなのかな・・・
たしかにこれは、
軒猿で使えばすごいことになりそうだ・・・」
そんなことを思いつつ、仕事とはいえ、
忍がほかの男と密通するのを想像して、
義元は眉をひそめた。
義元「・・・ああ・・・軽く相手をするつもりが、
とんだ蜘蛛につかまったよ・・・
謙信に怒られる覚悟しないとな・・・」
お飾り当主の自分が、
謙信の戦力をそぐような発言をしたら、
きっと責められるという次元ではないだろう。
でも義元はそれを抜きにしても、
自分をとらえた忍が欲しくてたまらなかった。
まるで扇のような半月をふと見て、
義元は静かに微笑んでいた。
おしまい