第10章 【許されざる呪文】
「ロン!ハリーは学校を出ちゃいけないのよ!いつブラックが襲い掛かってくるか分からないのに!」
「人が大勢いるホグズミードで騒ぎを起こすほど、ブラックだって馬鹿じゃないさ」
「ブラックは脱獄不可能と言われたアズカバンでさえ脱獄したのよ!どんな手を使ってくるか分からないわ」
「それじゃあ君はハリー1人だけを城に残して、皆で楽しくホグズミードに行こうって言うのかい?」
この話しは平行線をたどると思われたので、クリスは当の本人であるハリーの意見を聞くことにした。やや考えた後、ハリーは自信なさそうに答えた。
「うん、僕……マクゴナガル先生に聞いてみるよ。ホグズミードに行けるかどうか」
「そうこなくっちゃ!」
2人が城を離れると聞いて、ハーマイオニーは呆れて物も言えなくなってしまった。そのかわり今度はクリスに同意してもらいたさそうに視線を向けたが、その時ちょうどハーマイオニーのペットのクルックシャンクスが、大きな蜘蛛の死骸を口にくわえて膝に飛び乗って来た。
「なにそれ……僕への嫌がらせ?」
ロンは蜘蛛にもクルックシャンクスにも良い印象を持っていなかったので、嫌そうな顔を隠そうともしなかった。反対に飼い主のハーマイオニーはクルックシャンクスを優しく撫でた。
「良くひとりで捕まえられたわね、クルックシャンクス」
「そいつをそのままにしておけよ、スキャバーズが僕のカバンの中で眠っているんだから」
まるでその言葉を聞いていたかの様に、突然クルックシャンクスがロンのカバンに飛び乗って深々と爪を突き立てた。ロンんは大急ぎでカバンを引っ張り、なんとかしてクルックシャンクスを振り払おうとした。
「おい!離せよ、この野郎!!!」
「止めてよロン!乱暴しないで!」
突然の騒ぎに、談話室にいた生徒達が、野次馬根性丸出しで見物しにきた。ロンは力いっぱいカバンを振り回し、クルックシャンクスを引き離そうとしたが、クルックシャンクスもカバンにしがみついて離れない。
そのうちスキャバーズの方がカバンからピョーンと飛び出して、人々の足の間を素早く走り回り、キャビネットの隙間に身を隠した。クルックシャンクスは、それを追ってキャビネットの隙間に手を伸ばして激しく引っ掻いていた。