第9章 【リディクラス!!】
「ッ!?クリスッ!呪文を!!」
「リ、リディクラス!!」
クリスが呪文を唱えると、クリスそっくりのボガートはみるみる内に膨れ上がり、風船のようにまん丸になってゆっくりと空中に浮かぶと、そのまま空気が抜けた様にブシュ―っと職員室の中を飛び回った。そしてペラペラになってハリーの真ん前に着地した。
ハリーは自分もみんなと同じ様に杖を構えたが、それよりも素早く、ルーピン先生がハリーの前に立ちふさがった。するとボガートは銀白色の水晶玉に姿を変え、先生は軽く杖を振って「リディクラス」と呟いた。たちまちボガートは煙のように消え、生徒達は興奮冷めやらぬ様子で拍手をした。
「皆良くやったね、ボガートと対決した生徒達には5点ずつあげよう。それに、質問に答えてくれたハーマイオニーとハリーにも5点だ。それと――クリス」
突然声をかけられ、クリスはドキッとした。先生の口元は相変わらず笑っていたが、目は真剣そのものだった。この時、先生を目の前にしてクリスは初めて恐怖した。
「後片付けを手伝ってもらいたいから、このあと少し残ってもらってもいいかな?」
「は……はい」
こうして自分達の術の成功に満足した生徒全員が夕飯を食べに行く中、不安そうなクリスだけがルーピン先生と一緒に職員室に取り残されることになった。