第9章 【リディクラス!!】
思案に暮れていたその時――ふと『例のあの人』が頭に浮かんだ。が、1年生の時も2年生の時も、ハリーと一緒に『例のあの人』を打ち負かしている。それならいったい、自分が一番恐れている物は何なんだろう――。
「次はクリスだ!前に出て!」
ルーピン先生の朗らかな声でクリスはハッと我に返った。そしてボガートの前に立つと、それまでピエロに変身していたボガートが、シュッと小さくなった。かと思ったら、真っ黒いローブを目深にかぶった魔法使いに変身した。
背丈もクリスと同じくらいで、同じ様な杖を持ち、唯一ローブの隙間から見える唇も真っ赤でクリスとそっくりだ。
クリスは訳が分からず、取りあえず鏡のようなボガートに向かって右手を挙げてみた。するとボガートも鏡のように左手をあげた。次に万歳をすると、これまた同じようにボガートも万歳をした。それを見ていた他の生徒達が、くすくすと笑い始めた。
クリスは次々とポーズを取ったが、ボガートも鏡の様に同じポーズを取った。生徒達はクリスがポーズをとる度に同じようにポーズをとるボガートを見て笑っていた。――こんなマヌケなものが、本当に自分の1番恐れているものなのだろうか――。
「もう良いよ、クリス。さあ、呪文を」
ルーピン先生に促され、クリスが杖を構えると、同じようにボガートも杖を構えた。その刹那、ボガートの赤い唇がニヤリと笑った。
「アバタ――」