第9章 【リディクラス!!】
「大丈夫、怯えなくていいよ」
暴れる洋箪笥を目の前に怯える生徒達を見て、先生はまるで悪戯をする子供の様にくすくすと笑った。
「この中にはまね妖怪――ボガートが入っているんだ。さて問題、ボガートとはいったい何でしょう」
誰よりも――あのハーマイオニーよりも――先にクリスが手をあげた。ルーピンはそれを見てクリスを指した。クリスは緊張しながらも、教科書に載っていた事を思い出しながらたどたどしく答えた。
「ぼ、ボガートとは変身妖怪で、わわわ私達の心の中に潜む一番怖いと思うものに、へへ変身します!」
「うん、上出来だ。グリフィンドールに5点」
それを聞いて、クリスは花のほころぶような笑顔を見せた。憧れのルーピン先生の授業で、1番目に点数を得たのだ。そう思うとクリスは天にも昇る気持ちだった。
ルーピン先生はボガートの入った様箪笥の前を、行ったり来たりしながら説明を始めた。
「ボガートは暗くて狭い所を好む。このように洋箪笥やベッドの下の隙間、それに流しの下の食器棚など様々な所だ。因みにこのボガートは昨日の午後に入り込んだ奴で、3年生用の実習に使いたいからとダンブルドア校長に頼んでそのまま放っておいてもらったやつなんだ。さてここで次の問題、ボガートは普段どんな姿をしているでしょう」
再びクリスがサッと手をあげたが、ハーマイオニーも負けじと背伸びをしてピンと手を伸ばしていた。先生はちょっと悩んでから、ハーマイオニーを指した。
「暗がりの中にいるボガートの姿は、まだ誰も知りません。と言うのも、ボガートはまだ何の姿にも変身していないからです。私達の前に出てきた時、初めて変身してその姿を現します」
「その通り、とても良い答えだね」
先生に褒められて満更でもなさそうなハーマイオニーに、クリスはキッと鋭い視線を送った。それを見て、ハーマイオニーが小さく「ごめん」と謝った。クリスの中では、例え親友であろうとルーピン先生の株をあげる人間は敵だ。
「つまり、私達は初めからボガートより有利な点にいる。どうしてか分かるかい、ハリー?」
「えっと……僕たち、人数が多いのでどの姿に変身すればいいのか分からないから……ですか?」