第9章 【リディクラス!!】
「あれ?ハーマイオニー?」
「どこに行っちゃったんだろう?僕たちのすぐ後ろを歩いていたのに」
不思議に思っていると、ハーマイオニーが反対側の廊下の曲がり角から急いでこちらに走って来るのが見えた。
「どういう事?ハーマイオニー?」
「えっ?何が?」
「今さっきまで僕らのすぐ後ろを歩いていたのに、気が付いたら反対側の廊下から走って来たから」
「えっ……そ、そうね――あっ!!」
その時、ハーマイオニーのカバンが裂けて教科書が散らばった。無理もない、ハーマイオニーのカバンは分厚い教科書がぎゅうぎゅう詰めに入っており、とても重量に耐えられるとは思えなかった。教科書を拾いながら、ロンが不思議そうに聞いた。
「ハーマイオニー、君が優秀なのは知ってるけどさ、何も今日授業が無い学科の教科書まで持ち歩くことないんじゃない?この後は『闇の魔術に対する防衛術』があるだけだよ?」
「ええ、そうね」
ハーマイオニーは凄く慌てている様子だった。そして全ての教科書を両手に抱えると「今日は初めての『闇の魔術に対する防衛術』の授業だから急ぎましょう」と言いのこしてさっさと行ってしまった。
怪しいハーマイオニーの態度に、3人は頭に『?』マークを幾つも浮かべながら彼女の後姿を見つめていた。
怪しいハーマイオニーの態度はさておき、遂に、遂にクリスが待ち望んでいた『闇の魔術に対する防衛術』の授業がやってきた。クリスは一番前の席を取り、ルーピン先生がいつ来るかドキドキしながら待っていた。いつあてられても良いように、教科書を何度も何度も読み返し、予習に余念はなかった。そしてついにルーピン先生が教室に入って来ると、クリスは緊張で背筋がいつもの倍はピシッと伸びた。
「やあ、みんな。少し遅れて悪かったね。今日は実地訓練をするから、教科書はしまって杖だけ持ってきてくれないかな」
先ほどまで嫌みったらしいスネイプの声を聞いていたせいか、ルーピン先生の声はクリスの耳にまるで春風のように優しく届いた。頭の中がお花畑になりつつも、ハーマイオニーに急かされてクリスは急いで教科書をしまって杖を取り出した。