第9章 【リディクラス!!】
次の日になっても、その次の日になっても、ドラコはまだ傷がうずくと言って医務室のベッドから出てこようとしなかった。これは怪我を理由に授業をさぼると同時に、ハグリッドをクビにする気だと思ったクリスは、怒って「もう見舞いになんて来てやるもんか!」と怒鳴ってやった。すると怪我から1週間後の『魔法薬学』の授業になって、ようやくドラコは授業に顔を出した。
しかしヒッポグリフにやられた腕は包帯でぐるぐる巻きになっており、今まさに傷を負ったばかりだというような顔つきで教室に入って来た。それを見て、クリスの眉根に皺がよった。どう考えても、ドラコの傷は完治しているはずだ。1年前、ハリーがロックハートにでたらめな呪文で腕を“骨なし”状態にされてもマダム・ポンフリーの治療のおかげでたった1日で完治したのだ。ちょっとヒッポグリフに引っ掻かれて血を出したくらいで、こんなになるわけがない。
だが『魔法薬学』の教授であるスネイプは「もう傷の方は大丈夫かね」と心配そうに声をかけた。これがまたグリフィンドール生の不興を買った。
「ドラコ、もう授業に出てきて大丈夫なの?」
「ああ、まだ傷は痛むけど、そんなに授業を休んでもいられないからね」
パンジー・パーキンソンが心配そうな声をかけ、ドラコはまるで今しがた傷を負った英雄気取りで返事をした。そしていつも通りズリザリン生の集まるテーブルではなく、何故かハリー、ロン、クリスのいるテーブルに道具を置いた。
「先生、僕腕が痛いので、誰か代わって雛菊の根を刻んでもらわないと……」
「ウィーズリー、マルフォイの根を刻んでやりたまえ」
スネイプは冷たい声で素早く言った。ドラコの汚いやり口に怒り震えながら、ロンはドラコの雛菊の根を取るとナイフで滅多切りにした。
「せんせーい、ウィーズリーが僕の根を滅多切りにしました」
やっと授業に出てきたと思えば、そう言う魂胆かと、クリスはカチンときた。ドラコの顔がしてやったりという風にニヤリと笑った。そして今度はハリーに萎び無花果の皮をむかせようとした。ハリーは何も言わずドラコの顔も見ずに萎び無花果を取ると素早く皮をむいてドラコに放った。ドラコはますます得意になって笑っていた。その顔を見て、頭にきたクリスはサッと手をあげた。