第7章 【占い学と死神犬】
「う~ん……これは、ハートかな?教科書によると――『恋が実る』って書いてある。でも待てよ、逆さにすると、クローバーにも見える。意味は――『幸運』『約束』おいおい、『復讐』なんてものもあるぞ。ハーマイオニーはどうだ?」
それまでジッとカップを見つめていたハーマイオニーだったが、突然カップを受け皿の上にもどして教科書をしまいはじめた。いつものハーマイオニーらしくない行動に、クリスは驚きを隠せなかった。
「どうした、ハーマイオニー?何か悪い予言でもあったのか?」
「そうじゃないわよ。こんな馬鹿馬鹿しい授業、やるだけ無駄だわ」
そう言って、カバンから『数占い学』の教科書を取り出して読み始めた。いくらトレローニー先生が「この授業に教科書はあまり必要ない」と言ったからとしても、あの勉強の虫であるハーマイオニーが、授業をサボりだすなんて思えなかった。朝食の時、何か悪い物でも食べたのだろうか。
するとその時、隣りで占いをしていたハリー達の傍に、トレローニー先生がやってきて、ハリーのカップを取り上げた。トレローニー先生はジッとカップの底を見つめると、大きく目を見開いた。
「隼……悪い兆しだわ。彼方、何か悪い物に狙われていますわ」
「笑っちゃう。そんな事、誰だって知ってるわ」
ハーマイオニーが、仮にも先生に向かってこんな態度をとるなんて今まで1度たりとも見たことが無かった。勉強のし過ぎでついにハーマイオニーの頭がイカレてしまったのではないかと、クリスは本当に心配になってきた。
「だってそうでしょう?ハリーと『例のあの人』の関係なんて、世界中の皆が知ってるわ」
聞こえよがしに喋るハーマイオニーを無視するように、トレローニー先生はますますじっくりとハリーのカップを見つめていた。教室はいつの間にかシーンと静まり返り、皆の視線が先生とハリーに注がれていた。そしてトレローニー先生が、ヒャッと短い悲鳴を上げると、ハーマイオニーはそれを鼻で笑った。
「ああ――なんて可哀想なこと……いいえ、駄目よ。こればっかりはお聞きにならないでちょうだい」
「先生、いったい何だったんですか?」
「彼方……ああ、悲惨なことに彼方には……グリムが憑りついています!」
「え?何ですかそれ」
「グリムです、恐怖の死神犬ですのよ!!」