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ハリー・ポッターと恋に落ちた道化師

第33章 【月夜の晩】


 いくら同じスリザリンの血統とは言え、こんなに顔が似ているものなのだろうか……。同じように黒い髪、色素の薄い肌、そして赤い瞳。もしかすると――いや、そんな訳がない。これはきっとただの偶然だ。そんな事、ある筈がない。

「まだ現実に目を背けているのかい?ならば良い、見せてあげるよ、君の求める真実とやらを……」

 急に辺りが眩しくなり、クリスは顔を覆った。そして次の瞬間、目の前に広がっていたのは暗い、松明だけが頼りの不気味な部屋だった。
 皆ローブを被り、仮面をつけた大人達が列をなし何かを待ち望んでいる。そしてその列の中心を、生まれて間もない赤ん坊が抱きかかえられ進んでいく。
 赤ん坊は泣き声を上げ、大きく冷たい石で出来た祭壇の上に乗せられると、より一層激しく泣いた。まるでこれから先、何をされるのか分かっている様だった。

「クラウス、赤ん坊を押さえておけ」
「……御意」

 皆と同じように仮面をつけた父が、赤ん坊を無理矢理祭壇に抑えつけた。赤ん坊はあらん限りの力で泣き、暴れていたが、大人相手に敵う筈がない。そして……蛇のような顔をした男が杖を取り出すと、赤ン坊の左手に杖を当てた。
 その時、クリスの左手首も同じく、焼き鏝をあてられたかのように熱を持って痛み出した。そして蛇のような顔をした男が赤ン坊が良く見える様、高々と抱き上げた。するとローブを被っていた大人たち全員が声を上げた。

「我が主にさらなる栄光を!」
「祝福を!闇の姫君に祝福を!」
「これで精霊たちは私達のものだ!!」
「粛清を!汚れた血に粛清を!!」

 クリスは腕と同じくらい頭が痛くなって、徐々に意識が遠のいて、また意識が何もない真っ暗闇の中へ沈んでいった。しかし大人たちの声はどこまでも耳に追いかけてきた。

――栄光を!――祝福を!――汚れた血に粛清を!――粛清を!――

 その声を聞きながら、クリスの意識は深い、深い闇の中へと落ちていった。
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