第32章 【幕引き】
「信じてくれ――ハリー。私は決してジェームズやリリーを裏切ったりしない。裏切るくらいなら私が死ぬ方がましだ」
「――分かった」
「そんなっ!!?」
ハリーが頷くと、ピーターが叫んだ。奴にしてみれば、これは死刑宣告と同じでもあるだろう。ピーターは他に味方になってくれそうな人物はいないかと辺りを見回し、再びルーピン先生の足元に擦り寄った。
「リーマス、リーマス助けてくれ。君ならこんな奴の事を信じないだろう?もし私達が入れ替わっていたら、君に真っ先に言うはずだ」
「もし私がスパイだと思っていたら、この計画の事は話さなかっただろう。そうだろうシリウス?だから私に言わなかったんだ」
「その通りだ、すまないリーマス」
「気にしないでくれ。その代り、この12年間君をスパイだと思っていた事を許してくれ」
「勿論だとも」
2人とも腕をまくり、杖をピーターに向けた。ピーターはそれから逃げる様にコソコソと床を這いずりまわった。
「一緒に殺るか?」
「そうしよう」
「止め……止めてくれ……」
ピーターは涙をボロボロ流し、急いでベッド際にいるロンの所へ四つん這いで向かった。
「ロン、助けてくれ……私は良い友、良いペットだった。そうだろう?私が死んでも良いって言うのかい?君はそんな非情な子じゃないはずだ……」
「お前を一緒のベッドに寝かせていたなんて!」
ロンは不快そうに顔を歪め、折れていない方の足でピーターを蹴ろうとした。ピーターはなんとかそれを避けると、今度はハーマイオニーのローブのすそに薄汚れた手で触ろうとした。
「優しいお嬢さん、貴女なら分かってくれるはずだ。賢い貴女なら、誰が嘘を言っているか――」
しかしハーマイオニーは、勢いよくローブを掴んで引っ張り、怯えた顔でピーターの手の届かない壁際まで下がった。ピーターは部屋に居る人間全員の顔色を窺うと、今度はいきないりクリスを指さして叫んだ。
「そっ……そうだ!こいつだ!こいつの方が怪しいぞ!なんて言ったってこいつは――」