第31章 【ピーター・ペディグリュー】
「それは違う。この猫ほど賢い猫は他にはいない。ピーターを見るなり、直ぐに正体を見破った。そして私に出会った時も、私がただの犬ではない事を見抜き、私の目的を告げると、私を手伝ってくれた」
「まさか、クルックシャンクスがスキャバーズを襲っていたのは……その為?」
ハーマイオニーが信じられないとでもいう様に驚いていた。ロンもクリスも信じられず、スキャバーズとクルックシャンクスを交互に見やった。
「その猫は、ピーターを私の所に連れて来ようとしてくれた。だが出来なかった。そこで私の為に、グリフィンドール塔への合言葉を盗み出してくれた。誰かが書いた1週間分の合言葉の紙を、な」
ブラックの話しを聞けば聞くほど、分からなかった疑問点がまるでパズルの様に合致していった。ならば試しにで良い、ブラックにスキャバーズを渡してみたらどうだろう。もしスキャバーズがただのネズミなら、何の問題も無い。
だがもし、本当にスキャバーズがピーター・ペディグリューなら、聞きたい事が山ほどある。クリスはロンに近づいた。
「ロン、この人にスキャバーズを渡してみたらどうだ?本当にスキャバーズがただのネズミなら、疑いが晴れる。そうだろう?」
信用されたのが余程嬉しかったのだろうか。クリスが提案すると、ルーピン先生の顔が場違いなほど明るくなった。
「良く言ってくれた、クリス。さあ、ロン、ピーターを渡してくれ」
「駄目よ!クリス、この人達の口車に乗ったら!!貴女は相手がルーピン先生だからって気を許しすぎているわ!!」
「そうだ!現にこいつ自身が言ったんだ!僕の両親を殺したって!!」
確かにハリーの言う通りだった。先ほど、ブラック自身がハリーの両親を殺したと言ったのだ。ハリーにそのことを指摘されると、ブラックは骸骨の様な顔にさらに暗い影を落とした。
「そうだ……私が殺したも同然だ――私が……私がピーターを『秘密の守人』にするようジェーズムとリリーに勧めたんだ」