第3章 【Fast contact】
「無理だよ、魔法省が躍起になって探しているって言ってたし。捕まえるのはアズカバンの看守だって」
「ハア……1000万ガリオン。あれば苦労しなくて済むのに……」
そんな事を話しながら歩いていると、すれ違いざま、人にぶつかって持っていた荷物を道にばら撒いてしまった。慌てて拾おうと道にしゃがむ。
「すまない。ちょっとよそ見をしていてね」
「いいえ、こちらこそすみません」
ぶつかった人は、鳶色の髪につぎはぎだらけのローブを着ていた。歳は父より少し若めの男性で、顔に獣が引っ掻いた様な傷があった。男性は教科書を拾うと、優しく微笑みながらそれらをクリスに手渡してくれた。
「はい、これ――君たちは、ホグワーツの生徒達だね?」
「「は、はい」」
「学校は楽しいかい?」
「う~ん、嫌いな授業もあるけど、楽しいです!」
ハリーが素直にそう答えると、男性はニッコリ笑ってくれた。ロックハートの様などこか気取った笑顔ではなく、自然な優しい顔だった。ハリーとクリスの顔を見て、男性はこう言った。
「そうか、じゃあこれからが楽しみだ」
「これから?」
「いや、なに……こっちの話しだよ。ぶつかってしまって悪かったね」
それじゃあ、と言って男性は微笑みながら人ごみの中に消えて行ってしまった。――その時はまだ知らなかった。この出会いがクリスにとって、運命の出会いになると言う事を。