第26章 【クィディッチ優勝杯】
クリスの脅しが聞こえたのかどうかは分からなかったが、突然、ハリーがある一点に向かって滑走しだした。きっとスニッチを見付けたのだ。クリスはとっさにハグリドから双眼鏡を奪ってハリー見た。
グリフィンドールから、皆声を嗄らしてハリーの名前を叫んでいる。ハリーが手を伸ばした、その時――なんとドラコがファイアボルトの尾を握りしめ引っ張った。ハリーは急に減速し、後ろを振り返ってドラコを睨みつけたが、その間にスニッチはどこかに行ってしまったらしい。フーチ先生はまたホイッスルを鳴らした。
「こんな手口は見たことがありません!ペナルティーを!グリフィンドールにペナルティー・シュート!」
まさにグリフィンドール席からはブーイングの嵐だった。それはグリフィンドール席だけでは留まらず、実況のリーも、そしてその隣のマクゴナガル先生さえ拳を振り上げ、怒りで我を忘れて何か大声で叫んでいた。もし魔法のマイクで拡声されていたら、さぞかし面白いモノが聞けた事だろう。それだけが残念だった。
アリシアがペナルティー・シュートを決めようとしたが、怒りで手元が狂い、ゴールポストから1、2メートル外れてしまった。グリフィンドールチームは、度重なるスリザリンのペナルティーに集中力を乱され始め、逆にスリザリンは計画通りと言った風で調子に乗り始めてきた。
「さて、今度はスリザリンの攻撃です。守れよ、ウッド。負けるな――ああ!モンタギューがゴールを決めた……」
リーが残念そうに言った。これで点差は70対20でぎりぎり50点差だ。
ハリーは今や上空で必死になってスニッチを探していた。これ以上試合が伸びると、グリフィンドールが不利になると読んだのだ。
またしてもクアッフルはグリフィンドールのものになり、観客は皆そちらに目を奪われていた。しかし、その下で、突然ドラコが疾走し始めた。スニッチを見付けたのだ!ハリーは急いでそれを追ったが、ドラコの方がリードしている。観客がその事に気づいたのは、ドラコがスニッチを掴もうと手を伸ばしている所だった。
「ハリィーー!!」
力の限りクリスが叫んだ。しかしその叫び声もハリーの耳には入っていなかった。