第25章 【君が僕で、僕が君で】
『魔法薬学』の授業ほど、大変な授業は無い。調合は難しいし、おまけに教師のスネイプは自分の寮のスリザリン贔屓で、スリザリン生がちょっとミスを犯しても御咎めなしなのに、グリフィンドール生がちょっとでもミスをしようものなら、たちまち減点となる。
いや、ミスをしていなくても減点される場合もある。特にハリーが目の敵にされていて、何かと言えばハリーを虐めるのだ。反対にドラコがお気に入りの様で、大した事をしていなくても加点の対象となる。
だからハッキリ言って、グリフィンドール生はみんなこの授業が大っ嫌いだ。特にハリーと、もう1人の犠牲者であるネビル・ロングボトムは――。
ネビルはこの教科が大の苦手だ。いつも緊張で手が震えて調合を間違えるし、スネイプが傍を通っただけで物を取り落すくらい、スネイプが苦手だ。
だからいつも優秀なハーマイオニーか、何故かこの学科だけは得意なクリスが日によって交替しながらネビルの面倒を見ていた。
クリスは寮こそグリフィンドールだったが、実家は皆スリザリン出身者ばかりと言う純潔一家だった。その所為か、スネイプはクリスには何も文句を言わなかった。だからちょっとクリスが調合が誤っても、許される範囲内だったらスネイプは無言で傍を通り過ぎていった。
今日はクリスがネビルと一緒のテーブルで調合する番だったので、クリスはいつもより神経を研ぎ澄ましてネビルの様子を見ながら、自分の調合を行っていた。しかし今日の調合はいつもより面倒な配合を要していた。だから、ネビルの失敗に、気づくのが一瞬遅れてしまった。
「あっ、ネビル!それはまだ早い!!」
「えっ!?」
クリスがネビルの失敗に気づいた時にはもう遅かった。十分煮詰めてから薬草を入れるのに、ネビルは煮詰める前に薬草を、それも必要以上に鍋に入れてしまった。次の瞬間、ネビルの鍋が大爆発を起こした。
と、同時に調合していた薬は飛び散り、クリスとネビルは頭からびっしょり薬まみれになり、煙を嫌と言うほど吸い込んでしまった。頭がクラクラして、何も考えられない。やっと意識が戻って来た時には、カンカンになったスネイプが怒鳴りに来たところだった。