第24章 【ハーマイオニーの変貌】
「お前――!!」
カッとなって、クリスは杖を取り出そうとした。しかしそれより早く――バシッ!という乾いた音が玄関ホールに響いた。手を出したのは他でもない、ハーマイオニーだった。
ハーマイオニーがキュッと唇を噛み締め、ドラコの横っ面を力いっぱい引っ叩いたのだ。これにはハリーもロンもクリスも目を見張った。ドラコは呆然として、叩かれた頬に手を当てていた。ハーマイオニーはもう1度手を大きく振りかざした。
「あなたに……あなたなんかに何が分かるって言うのよ!ハグリッドがどんな辛い目に遭っているかも知らないで!!」
2発目をお見舞いしようとした手を、ロンが寸前で止めた。グラップもゴイルも棒立ちで事の成り行きを見ていたが、ハッと気づいてドラコの前に盾のように立ちふさがった。それを見てハーマイオニーは杖を取り出した。学年トップのハーマイオニーに呪いを掛けられたら堪らんと、呆然としているドラコの両腕を掴み、グラップとゴイルは地下牢へと続く階段を走って逃げていった。
「ハーマイオニー!!」
「ロンッ!どうして止めたの!?」
「どうしたもこうしたも無いよ!いきなりマルフォイの頬を引っ叩くんだもん、ビックリしたよ!」
「あら、それくらいクリスだってやったことあるでしょう!?」
ハーマイオニーの問いに、クリスは首を横にブンブンと振って否定した。確かにドラコとの付き合いは長いし、何度手を上げたくなったか分からないが、正面切って横っ面を引っ叩いた事は今まで1度たりともなかった。そう言う意味では、ハーマイオニーに先を越されてちょっと悔しかった。
「ハリー!」
「はっ、はい、なんでしょう!?」
「今度のスリザリンとのクディッチ戦、絶対に勝って頂戴!あんな奴らに負けたら、私絶対に許さないから!!」
「わ……分かりました」
悲しきかな、畏れと驚きのあまり敬語になってしまうハリーだった。ハリー、ロン、クリスの3人は「もしかして4人の中で1番怒らせてはいけないのはハーマイオニーなのではないか」という疑問が生じた。
それから午後の授業が始まり、4人は『呪文学』の教室へ向かった。久しぶりに4人そろって授業が受けられると思っていたのに、何故か教室に入ると、ハーマイオニーの姿が無かった。
「あれ?ハーマイオニーは?」
「きっとトイレか何かだろう」