第22章 【愚か者】
それから2人で、ラジオの試聴を行った。周波数を合わせるのに苦労したが、やっとマグルの最新ヒット曲が流れると、2人は「おお―!!」と声を上げた。ロンもクリスと同じく生粋の魔法族出身だから、マグルの機械に触れるのはこれが産まれて初めてだったので感動もひとしおだ。
そしてハニーデュークスから学校に戻ると、丁度ハリーの練習が終わる時間だった。ロンは待ちきれなかったと言わんばかりにグラウンドを横切り、ファイアボルトに乗ってみた。クリスはファイアボルトがどんな箒か知らなかったが、確かにスピードや運転性のキレはニンバス2000より数段上だと感じた。
それからどれだけ時間が経ったのだろう。クリスがファイアボルトの見物に飽きてあくびをかみ殺していた頃、やっとロンは満足して地上に降りてきた。そしてハリーとロンは暗くなった道の中、ずっとファイアボルトの動きや加速度について熱を込めて話し合っていた。
箒に興味のないクリスは大事なラジオをローブの内ポケットにしまい、今日聞いた音楽を反芻していた。マグルは魔法無しでどうやってこんな革命的な発想を思いつくのだろうと感心半分憧れ半分、うきうきと2人の後ろについて歩いていた。
その時、突然ハリーが立ち止まったので、クリスはもろにハリーの背中に激突した。
「痛っ!途中で止まるなハリー」
「どうしたの?」
ハリーは震える指で木陰を指した。ロンとクリスは杖を取り出して「ルーモス!」と唱えた。するとクルックシャンクスが木陰にうずくまっていた。
ロンは足元の小石を拾ってクルックシャンクス目がけて投げつけた。しかし小石はクルックシャンクスのわきを通り過ぎ、クルックシャンクスはロンに向かって、フーッと威嚇すると、どこか光の届かない所まで走って消えてしまった。
「正気とは思えないよな?ハーマイオニーの奴、スキャバーズを食っておいても、まだあいつを自由にさせておくんだぜ?」
ロンは折角の気分が台無しだと、ぷんすか怒って城への道を急いだ。クリスが不思議に思ったのは、ハリーが何も言わず、呆然としている事だった。
「ハリー?帰らないのか?」
「えっ?ああ、うん……帰るよ」
ロンが怒るのは分かるが、何故ハリーがこんなに落ち込んでいるのだろう。クリスは首をひねったが、答えは出てこなかった。