第21章 【消えたスキャバーズ】
「え?それは……それは言えないわ。でも、マクゴナガル先生ときちんと相談して決めたのよ。嘘じゃないわ」
「誰も嘘だとは思ってないけど、君って本当に優秀だなって思って」
ハーマイオニーは、赤くなった顔をより一層赤くさせた。そして何てことないように、古代ルーン文字の翻訳に取り掛かった。
ハリーはそれを見ながらロンを待っていた。それからクリスに目を向けたが、クリスは石の様にハリーとハーマイオニーに背を向けたまま動かなかった。ここにも意地っ張りが1人いると、内心ハリーは思っていた。
どうやったらクリスとハーマイオニーを仲直りさせられるんだろう。そんな事をぼんやり考えていると、突然男子寮から、とてつもなく大きな悲鳴聞こえてきた。これには宿題に没頭していたハーマイオニーでさえも、振りかえざるをえなかった。
談話室は静まり返り、階段を下りてくる足音だけが奇妙に響いてくる。いったい何があったのかと、それまで明日のホグズミード行きをこっそり計画していたクリスでさえ緊張して身を固めていた。そして足音の主――ロンがベッドシーツを持って談話室に下りてきた。その顔は憤怒の表情そのものだった。
「見ろよっ!!」
ロンはベッドシーツを揺らしながら、カンカンに怒ってハーマイオニーのテーブルにやって来た。
「何?どうしたのロン――」
「ハリーは黙っていてくれ!!」
怒りで我を忘れたロンは、今まさにハーマイオニーに掴みかからん勢いだった。流石の展開に、それまで無視していたクリスでさえハーマイオニーのテーブルに近づいた。
「見ろ!とにかく見て見ろよ!!」
「なんなの?ロン?」
「血だ!!――スキャバーズが、スキャバーズが……」
そこで一旦息を吸い込むと、大声でハーマイオニーに向かって怒鳴りつけた。
「スキャバーズがいなくなった!!!それでベッドのシーツに血がついていた!その他に、何があったか知りたいかッ!?」
「な、なにがあったの?」
怯えるハーマイオニーに向かって、ロンはテーブルの上にある物を投げつけた。他でもない、それは――見覚えのあるオレンジ色の猫の毛だった。