第21章 【消えたスキャバーズ】
ハーマイオニーは1人、山ほど教科書や辞書をテーブルの上に山の様に積み上げ、その中で勉強をしていた。2人はクリスの顔色を窺ったが、クリスは頑としてハーマイオニーと仲直りする気なんて無かった。マクゴナガル先生から返してもらったラジオの取扱説明書を、暖炉の前のソファーに座って読み始めた。こうしてテコでも動かない姿勢を見せると、ハリーとロンは仕方なく自分達だけでもハーマイオニーと仲直りしようと試みた。
「やあ、ここに座っても良い?」
「……どうぞ!」
つっけんどんだったが、ハーマイオニーは宿題を邪魔しないなら近づくことを許したようだった。ハリーは返してもらったファイアボルトを、ハーマイオニーにも良く見える様に持ち上げた。
「返してもらったんだ、呪いは何もかけられていなかったよ」
「あら、でもかけられていたも知れないじゃない」
「うん――でも、これで安全だって証明されたわけだ!」
ロンは努めてハーマイオニーのお蔭だと聞こえる様に言った。それからニコニコ笑っって「ありがとう」とお礼を言った。ハーマイオニーはそれを聞いて、羽ペンを握った手を、一瞬だけピタッと止めた。それから照れ隠しの様に、真っ赤な顔をしながら書いたレポートの束をバサバサとひっくり返して、探し物をしているふりをした。
「それじゃあ、僕もそろそろファイアボルトをしまって、宿題をしなくちゃ」
「ハリー、それなら僕がファイアボルトを部屋まで持っていくよ!スキャバーズにネズミ栄養ドリンクも飲ませなきゃいけないし」
2人は、こんな晴れやかな時は無いと言わんばかりに頬を緩ませていた。ロンはまるでガラス細工を持つように、慎重かつ丁寧にファイアボルトを握ると、ゆっくり男子寮へ続く階段を上って行った。ハリーはロンが宿題を持ってくる間、ハーマイオニーととりとめのない会話をしていた。
「凄いね、この宿題の量。僕なら3日と持たないよ」
「それほどでもないわよ。一生懸命やれば、必ず結果はついて来るもの」
「それに、同じ時間に教科をいっぺんにどうやって取ってるの?」