第20章 【チョコチップクッキー】
「……クリスマスの日、匿名で私とハリーに思いがけないプレゼントが届いたんです。ハーマイオニーは……それがシリウス・ブラックからの贈り物だとマクゴナガル先生に告げ口して、プレゼントを没収させたんです」
ルーピン先生は、悲痛な表情を見せた。しかし、クリスを安心させようと、座っていたイスから離れクリスの傍にひざまづいて、クリスの手を取った。
「思いがけないプレゼントを貰って嬉しい気持ちは良く分かるよ。だけど、君たちが重ねてきた時間、思い出や絆を天秤にかけて、どちらの方が重いのかよく考えてみれば良い。きっと直ぐ答えが見つかるよ」
その言葉を聞いて、思わずクリスの目からぽろっと涙が零れ落ちた。すると先生は、優しい目をしてクリスの頭をなでた。
「大丈夫、君たちの友情はそんな事で壊れたりはしない。僕が保証するよ」
「でも……でもっ、いまさらどうやって謝ればいいか分からないんです」
「無理に謝る必要はないさ。いつも通りに接していれば、きっと解決できる」
「――出来ないんです、私は……ごめんなさい、先生みたいに優しくなれません」
「私は優しくなんてないよ、ただ臆病なだけさ」
「そんな事ありません!先生は優しくて、強くて、初めてコンパートメントで会った時から、私……」
自分は何を言おうとしているのだろう。こんな所で告白したって、先生を困らせてしまうだけだ。しかし涙と一緒に、堰を切ったように止めどなく言葉が溢れてきた。
「私も……私も本当は先生みたいになりたいんです。優しくて、強くて、誰かを守れる様に……もう誰も傷つけたくないのに、自分の心とは裏腹にどんどん人を傷つけていって――」
「それは、ある意味生きて行くためには仕方のない事だよ。誰も傷つけずに済む人生なんてないんだ」
「違います。そうじゃなくて……その、怖いんです、私……自分自身が――いつか、いつか大切な人達を傷つけてしまうんじゃないかと」
「それはどういう事だい?」