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ハリー・ポッターと恋に落ちた道化師

第20章 【チョコチップクッキー】


「はい、紅茶が入ったよ。お菓子はチョコチップクッキーで良いかな?」
「せせせ先生が用意してくれた物なら、何でも良いです!」
「そう?実を言うと、これは私の手作りでね。美味しいかどうか感想が聞きたいんだ」

 先生の手作りクッキーと聞いて、クリスは感無量だった。こんな幸せな日が来るとは……クリスはもう天にも昇る気分だった。
 幸せの絶頂のまま、早速、先生の手作りクッキーを口にしてみる。これは……甘い――甘すぎると言っても良い。これに砂糖を加えた紅茶を飲んだら歯が溶けそうだと思ったが、そんな事は口が裂けても言えなかった。

「どうだい?美味しいかな?」
「は、はい!とっても甘くて美味しいです」
「良かった。私の作る料理は、皆甘すぎて食べられないって言っていてね」
「そんな事ありません、本当に美味しいです!」
「ありがとう。――ところで、このプレゼント、開けてみても良いかな?」

 ついに来た、緊張の瞬間。手編みのマフラーを見て、先生の喜ぶ顔が見たい気持ちもあるが、もしガッカリした顔をしたらと思うと、絶望と羞恥心で死ねる。どちらにせよ、まだ心の準備が出来ていなかった。

「い、今ここでですか?」
「ダメかい?」
「いえ、その、駄目じゃありませんが……恥ずかしくて……」

 クリスは下を向いて小さい声で呟いた。あまりに声が小さかったのか、先生は気にせずリボンをほどいて中から手編みのマフラーを取り出した。一瞬、先生は呆気にとられた顔をしたので、クリスは後悔した。

「凄い……もしかして手編みかい?」
「はい……形は悪いですけど、喜んでもらえるかと思って……」

 しゅん、と肩を落とすクリスだったが、ルーピン先生は次の瞬間、今までより何倍も明るい笑顔を見せて笑ってくれた。

「ありがとう!こんな嬉しいクリスマス・プレゼントを貰ったのは何年ぶりだろう。本当にありがとう!」
「よ、喜んでもらえました?」
「もちろんだよ!ああ、こんな良い物を貰っておいて、何も返すものが無いなんて。本当にごめんよ」
「良いんです!先生に喜んでもらえれば、それだけで満足です!!」

 例えお返しなど無くても、先生のこの笑顔を見られらだけでここ数カ月の苦労は報われた。この世に幸せのメーターがあるとすれば、この瞬間クリスのメーターは振り切れていただろう。
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