第17章 【優しい手】
いつもの通り、その場でどちらがクリスの友人として相応しいかという言い争いが勃発した。言い争いは段々エスカレートして行き、もはや意地の張り合いとなって杖に手をかけるところまで発展した。そんな事をしていたせいで、クリスの意識が戻りつつあることに誰も気づかなかった。
「う……ん?」
「怪我をしたくなかったらこれ以上僕らと関わるな!!」
「その言葉、そのままそっくり返してやる!!」
「……ここは?どこだ?……うわっ!!」
クリスがビックリして大きく体を仰け反らせると、その拍子にハーマイオニーの腕の中から滑り落ち、床に尻もちをついた。
「あいたたた……」
「クリス!?」
「だっ、大丈夫!?クリス?」
「……だ、だれ?」
クリスの大きな瞳が、不安そうにハーマイオニーを見つめている。小さくなった所為でぶかぶかだった制服は脱げ、シャツ1枚という頼りない姿で必死にきょろきょろ辺りを見回している。
「ここ、どこ?あれ?チャンドラー?……チャンドラー!?」
「まさか、クリス……」
「……記憶まで子供の頃に戻っちゃったの?」
それまでの言い争いから一変、まさかの事態に思考がついていかず、誰も言葉が出てこなかった。そんな中、最初にハッと正気を取り戻したのはドラコだった。ドラコはハーマイオニーを押し退けると、しゃがんでクリスと目線を合わせた。
「退け!!クリス、僕だ。ドラコだ。大丈夫かい?」
「ド……ドラコ?」
「そうだ、君の1番の親友のドラコだ。分かるだろう」
ドラコが手を差し出すと、不安そうなクリスの目から一瞬にして迷いが消え、バシッと差し出された手を払いのけた。
「ウソをつくな!ドラコはわたしとおない年だ!!おまえみたいなヤツ知るもんか!!」
それだけ言おうと、クリスはハリー達6人の足元をすり抜け、驚くべきスピードでその場から逃げ去った。一瞬ぽかんと口を開けて見ていたハーマイオニーは、我に返ると事の重大さに気づき、ハリーとロンの背中を叩いて正気に戻させた。