第16章 【隠されていた真実】
「当然です!……ジェームズは、ブラックだったら『秘密の守人』になり、口を割るくらいなら死を選ぶだろうとダンブルドアに進言したんです。それにブラック自身も身を隠すつもりだと……それでもダンブルドアは納得なさらず、自分が『秘密の守人』になろうと思われたのですが、ジェームズが頑としてブラックを推したのです」
「でも、ジェームズは間違っていたんだ」
ハグリッドは低い声で唸る様に囁いた。ジョッキを握る手に力が入り過ぎたあまり、その右手は白んでいる。
「ダンブルドア校長先生は、少し前から味方の誰かが裏切って『例のあの人』に情報を流しているって気が付いてらした。だがジェームズは、ブラックに限ってそんな事はしないと言い張った!」
「それから1週間と経たない内でした……ブラックが裏切ったのは」
「あのクソッたれの裏切り者め!奴はジェームズとリリーの死を手土産に、『例のあの人』の側におおっぴらに舞い戻ろうとした。しかし皆知っての通り『例のあの人』は幼いハリーの為に弱体化して、逃げ去った。ブラックとしては計算外だっただろうよ、自分が裏切った途端、ご主人様が消えちまったんだからな!!」
ハグリッドはぐびっとジョッキを飲み干し、叩きつけるようにカウンターに置くと、深く酒臭いため息を吐いた。
クリスは、先が気になりつつも、これ以上聞いて良いのか判断に迷った。不安だけが、雪の様に胸の中に降り積もっていく。そんなクリスの心中を知ってか知らずか、先生方は話しを続けた。
「俺は奴に会ったんだ。ジェームズとリリーが殺された時、まだ小さなハリーを救い出したのは俺だ!可哀相なハリー……両親が殺された上に、額に傷までうけて……そんで、そこにブラックの奴が来た。お気に入りの黒いオートバイに乗って。俺は奴が『秘密の守人』だとは知らんかった。そして……そして俺は何をしてと思う――俺は奴を慰めたんだッ!!」
ハグリッドが大声でわめくと、店内にいた客が「なんだ、なんだ」と振り向いた。マクゴナガル先生はハグリッドが大声を出さないように諫めた。マダム・ロスメルタは続きが知りたそうに身を乗り出していた。