第15章 【悪戯仕掛人】
先程の態度から打って変わり、フレッドとジョージはコロッと態度を変えてハリーとクリスに向かい合った。ジョージは『忍びの地図』をハリーとクリスに差し出した。
「消すときはもう1度杖で叩いてこう唱えるんだ『いたずら完了!』ってね」
「それじゃあ諸君――」
「――ハニーデュークスでまた会おう」
そう言って、フレッドどはジョージはウインクして教室を出ていってしまった。取り残されたハリーとクリスは、突然の事でどうしていいか分からず、暫くボーっとしてしまった。しかし残された時間はそう無い。クリスは10数分程地図をジーッと見つめると、地図をハリーに手渡した。
「はい、これはハリーに渡すよ。私はもう暗記したからな」
「え!?もう!?」
「元々“ここ”の出来が違うんでね」
そう言ってクリスは人差し指で軽く頭を突いた。それを見てハリーは感心半分、苦笑いをした。別に何てことは無い。もともとクリスは地図や地形を覚えるのが得意なだけだ。
ハリーは黙ったまま何かを悩んでいた様だったが、暫く黙って地図を見つめ、やがて「よし!」と言って地図を畳んでローブの内ポケットに入れた。
「今ならフィルチやミセス・ノリスも近くにいないよ。行くなら今だ」
「それじゃあ、ロンとハーマイオニーの度肝を抜きに行きますか」
2人は顔を見合わせてニヤリと笑うと、隻眼の魔女の像の所まで行った。そして誰も近くにいない事を確認すると、隻眼の魔女の像のこぶの陰に身を隠した。だが、ここで問題が発生した。この先どうやってハニーデュークスまで行けばいいのか、聞き忘れた。しかしフレッドとジョージはもう出発した後だ。訊きたくても訊けない。
「どうする、引き返すか?」
「ちょっと待って」
ハリーはもう1度忍びの地図を取り出した。すると「ハリー・ポッター」と「クリス・グレイン」と書かれた小さな点が、これまた小さな棒の様な物で像をつついている。