第14章 【Shit】
チャンドラーが使えない所為で、肝心の編み方はハーマイオニーに習う事になり、早速昼休みに編み方を教えると約束してくれた。
クリスの頭の中では、もう自分の編んだマフラーを嬉しそうに巻いたルーピン先生を思い浮かべ、不気味な笑いを浮かべていた。妄想が先行するのはもはやクリスの悪癖であった。
その日、1番初めの授業は『薬草学』だった。薬草学が大の苦手なクリスも、今日ばかりは笑顔で授業を受けることが出来た。しかし要らない妄想が爆発して、時折自分で顔を赤くしては、照れ隠しにロンやハリーの背中をバンバン叩いて、スプラウト先生にばれない様、にやける頬を必死で隠していた。
次の授業は『魔法薬学』だった。こればかりは流石に妄想を爆発していられなかった。しかしムカつく事に、ハリー達が教室に入って来ると、すでに教室にいたドラコがまたしても、ハリーが箒から落っこちた真似をしてスリザリン生から笑いをかっていた。
そればかりか授業中しつこくディメンターの真似をしていたので、ロンが遂にキレて、ヌメヌメのワニの心臓をドラコに投げつけ、見事命中させた。それを見たスネイプはグリフィンドールから50点減点したが、クリスは密かにロンに「good job!」と親指を立てた。
午前中最後の授業は『闇の魔術に対する防衛術』だった。扉の前で、ロンは立ち止まって苦虫を噛み潰した様な顔をした。
「今日もスネイプだったら僕、今すぐ仮病で医務室に向かうからね」
「ちょっと待って……大丈夫よ」
ハーマイオニーが、扉を少し開けて誰がいるか確認した。クリスは扉からルーピン先生の姿を見ると、喜びと緊張で、何が何だか分からなくなった。とにかく、ルーピン先生に挨拶をしようとだけは思っていた。まるでロボットの様な固い動きでルーピン先生に近づくと、クリスは顔を真っ赤にしながら声をかけた。
「せ、せせせ先生、も、もう体調は良いんですか?」
「ああ、心配かけさせて済まなかったね。もう大丈夫だよ」
大丈夫だと先生は言っていたが、あまり大丈夫そうには見えなかった。以前より痩せこけ、ローブも本当に新調した方が良いと思える位くたびれていた。おまけに目の下には隈が出来ており、以前ホグワーツ特急の中で初めて出会った時と同じくらい疲れていそうだった。