第14章 【Shit】
マダム・ポンフリーの言いつけで、ハリーは週末まで医務室で過ごすことになった。ハリーは傍から見ても分かるほど意気消沈しており、皆ハリーを元気づけるために代わる代わるお見舞いに行った。ウィーズリー兄妹は勿論、ハグリッドやグリフィンドールの選手達、そして勿論ロン、ハーマイオニー、クリスの3人も空いた時間を見つけてはハリーに会いに行った。
しかしハリーはあまり嬉しそうではなかった。初めて試合で負けた上に、相方のニンバス2000まで失ったのだ。ハリーのチームメイトが、新しい箒を選ぶために『賢い箒の選び方』という本を持ってきたが、ハリーは曖昧な笑みを浮かべただけだった。
やがてハリーの退院を控えたある日、クリスは思い切ってハリーに提案してみた。
「ハリー、もし良かったら私のニンバス2000を使わないか?」
この発言には、ハリーだけじゃなくロンもハーマイオニーも驚いていた。何しろクリスの箒の腕前は学年最下位で、1メートルと浮かび上がった事が無い。それなのに競技用の箒を持っている事に、3人は正直、宝の持ち腐れだと感じた。
「え!?クリスがニンバス2000を持っているの?」
「ああ。父様からの贈り物だが、ハリーの役に立てるなら箒も喜ぶだろう」
「……でも、また暴れ柳にぶつかって壊れちゃったら困るでしょう?」
「う……それは、確かに困るな……」
「でしょう。良いよ、僕は僕で新しい箒買うから」
万事休す。ハリーを喜ばせようとしたが、逆にハリーに気を使わせてしまった。いったいどうすればハリーを元気づけてあげられるだろうと、クリスは頭を抱えた。しかしハリーを元気づけてあげられないまま、退院の日が来てしまった。
その日は朝から4人一緒に大広間で朝食をとっていた。グリフィンドールがハッフルパフに大負けした所為で、ドラコは大喜びでついに腕に巻いていた包帯をとって、ハリーが箒から落ちる場面を再現していた。頭にきたクリスだったが、もう2度とドラコと係わりたくないクリスはドラコの事を完全に無視することに決めていた。