第13章 【グリフィンドール対ハッフルパフ】
「ハリー……」
クリスが呟いたが、返事は無い。それを聞いてハーマイオニーが堰を切った様に泣きだした。ハーマイオニーの鳴き声が響く中、誰もが押し黙っていると、やがてうっすらとハリーの瞼が開いた。
「ハリー!!」
「……あれ?み……んな?」
「覚えているか?君、箒から落っこちたんだよ」
「……箒から?……そうだ、試合は?どうなったの?スニッチは?」
「セドリックが取ったよ。セドリックは試合のやり直しを進言したが、フーチ先生が勝敗を決めたよ」
ハリーはショックを隠し切れなかった。茫然と空を見つめ、やがて両手を握りしめて固く目をつぶった。まるで涙を堪えているようだった。
「ハリー、気にするなよ!誰だって一度位スニッチを取り逃がすもんさ」
「そうだよ、今までだってこれからだって、君はグリフィンドール始まって以来の最高のシーカーさ」
「でも、僕の所為で負けたんだ――」
「それは違う!あんな奴ら――ディメンターが来なければ君は勝っていた!」
「ディメンター……そうだ、あいつらはどうしたの?どうしてグラウンドなんかに現れたの?」
「それに関しては、ダンブルドアもカンカンだったぜ」
「そう……そうだ、ウッドは?」
「あー、まだシャワーを浴びてる。きっと溺死するつもりだよ」
フレッドが茶化しても、ハリーの気分は晴れなかった。初めて負けた。1、2年生の頃は、『例のあの人』との戦いの後で医務室に居た所為で優勝杯を逃したが、今回は違う。それにウッドは今年が最後の年だ。どんなことがあっても優勝杯を持たせてあげたかった。
両手を握りしめていたハリーは、思い出したようにハッと顔をあげた。
「だれか、僕の箒を知らない?」
その疑問に、その場にいた誰もが答え辛そうに黙りこくってしまった。そして重い沈黙をわざとおちゃらけて明るくしようと、ジョージが笑顔を取り繕った。
「あー、ハリー……何というか、ニンバスは――暴れ柳によって“放棄”された。“箒”なだけに!なんちゃって」
「え?それじゃあ、つまり……」
目を丸くするハリーに、アンジェリーナが何も言わず、黒いローブに包まれた物をハリーに手渡した。ハリーが震える手で丁寧にローブを解くと、中にあった物は、粉々になった柄と、小枝の集まりが数本だけのニンバス2000の無残な亡骸だった。