第12章 【ハロウィーンの恐怖】
「さて……どうしてこの様な……」
ダンブルドアが独りごちた時、生徒達の波をかき分け、マクゴナガル先生、ルーピン先生、スネイプ先生がその場に駆け付けた。ダンブルドアは先生達の顔を見ると、いつもの柔和な顔から一変して真剣な眼差しを見せた。
「事態は深刻じゃ」
「校長、私は『太った婦人』を探してまいります」
「頼みましたぞ、マクゴナガル先生」
マクゴナガル先生がその場を離れたその時、狙ったかのようにポルターガイストのピーブスが現れ、クスクスと笑いながら皆の頭の上を漂っていた。まるでこの状況が可笑しくて仕方がない様子だ。
「校長閣下、探さない方があの女の為ですぞ」
「ピーブス、君は何を知っているのかね?」
ダンブルドアの半月形の眼鏡の奥にある、ブルーの瞳がキラリと光った。この瞳に見透かされると、誰であっても隠し事が出来なくなってしまう不思議な力があった。
ピーブスは深々とお辞儀をすると、他人の不幸を餌にニヤニヤ笑って答えた。
「ええ、全て知っておりますとも校長閣下。あの女は合言葉を言わなかっ為、無残にも切り刻まれてしまったんです。そしてズタボロの姿で泣き叫びながら、次々へと風景画の中を駆け抜けていきました」
「ピーブス、勿体ぶらずに教えておくれ。いったい誰が婦人をこんな目に遭わせたのじゃ?」
ピーブスはニヤリと笑うと、空中で一回転してダンブルドア校長に顔をズイッと近づけた。
「あいつですよ、今噂のあいつ。――昔と変わらず癇癪持ちのシリウス・ブラックですよ」
それを聞いた生徒達は顔色を変えて悲鳴を上げ、気の弱い一年生なんかは倒れそうになっている。校長先生はその場にいる生徒全員に聞こえる様に大声を出した。
「皆、驚いただろうがピーブスの言っている事が嘘だとは思えん。そこで安全の為、もう一度大広間に集まってもらおう。ルーピン先生とスネイプ先生は他の先生たちと協力して、シリウス・ブラックがまだ城内にいるか確認してほしい」
それを聞いて、ルーピン先生もスネイプ先生も素早くその場を去った。残された生徒はダンブルドアについて大広間に戻った。グリフィンドール生が大広間に集まると、皆一斉に運良く自分たちが襲われずに済んだことに安堵の息を吐いた。