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【YOI】輝ける銀盤にサムライは歌う【男主&ユーリ】

第4章 エピローグ


「互いに思っている事は、一緒じゃないのか?いつもは口より先に手が出るお前らしくもない」
「悪かったな」
過去にするには早過ぎるかつての『悪童』ぶりをほのめかされたユーリは、不機嫌そうに眉根を寄せる。
「この大会で、『サムライ』の評価はうなぎのぼりだろう。それに伴い、注目度もこれまでとは比べ物にならない程上がっていく。そうなったら、果たして彼はいつまでお前だけを見ているのだろうな?」
「…!」
リンクで数人の女子スケーターと談笑する礼之の姿を見たユーリは、僅かに俯くと片手を口元に当てた。
「以前にも言ったが、『愛してんなら、態度で示せよ』だぞ」
「…うるせぇよ!お前こそ腰痛抱えてんのに、いつまでもリンクで冷やすような真似してんじゃねぇ!」
「コルセットや防寒対策は済ませているから、普通にしている分には心配無用だ」
些か芝居めいた口調のオタベックに、ユーリは照れ隠しに声を荒げるものの、礼之の周りから人が減らないのを盗み見ると、胸の奥がチクリと痛むのを覚えた。

「もはや日本の男子シニアは、勝生勇利と南健次郎だけじゃない!シニア1年目を堂々と戦い抜いた『青い瞳のサムライ』、伊原礼之の登場です!」
シルクハットとステッキを小道具に、リンクでコミカルに踊る礼之の姿に、客席から拍手と歓声がひっきりなしに起こっていた。
練習中、クリスに教わった小道具の扱い方を頭の中で反芻させながら、礼之はステッキを持ったままの状態で、2Aを着氷させる。
「やるぅ!ちょっと言っただけですぐ吸収しちゃうのは、心身共に若くてピチピチな証拠だねぇ♪」
「…その言葉の裏に潜む邪なモノを感じるのは、僕だけかな」
リンク裏で面白そうに口笛を吹くクリスの背後で、純が、訝しげに目を細めていた。
「ちょっとクリス、礼之くんは僕の大事な後輩なんだからね?」
「いやあ、これで競技中に俺なりの挨拶するのが最後かと思うとつい、ね。可愛い反応は、勇利も負けず劣らずだったけど」
「うわっ!?」
クリスに尻を撫ぜられた勇利が悲鳴を上げた瞬間、
「…俺の勇利に、何してくれてやがるんだい?」
恐ろしいまでに美しい笑顔を浮かべながら、ヴィクトルの手がクリスの手首を捻り上げていた。
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