第25章 イケメン童話:金の刀銀の刀(信玄)
ある日、
正直で心優しく不埒な男が、
森の泉に誤って刀を落としてしまいました。
「刀がないと戦に行けない…民は愚か、
家臣を守ってやる事も出来ない…」
透けるほど清らかな泉の水。
覗いてみるけれど、深くて底は見えない。
男が途方に暮れていると、突然、泉が輝いた。
眩しくて目を瞑り、開けてみると、
女神か天女か、
美しい女性が泉の上に立っていました。
「信玄、貴方の落した刀はこの金の刀ですか?」
「いいや」
「では、この銀の刀ですか?」
「いいや、ただの俺の刀だよ」
正直に答えました。
すると、女神はニッコリとわらって言いました。
「正直者の貴方にはこの金の刀を授けましょう」
けれど、信玄はいいます。
「いいや、俺は金も銀も必要ない。
俺の刀であればそれでいいんだ」
信玄は女神が授けると言った金の刀を、
迷いもなくキッパリと断りました。
「まあ、なんと欲の無い…いいでしょう。
貴方の刀、そして、他に望むモノをなんでも授けましょう。申してご覧なさい」
感心した女神は信玄の望むモノをなんでもくれると言いました。
「では…俺は、俺の刀を持った貴方が欲しい。美しい俺の天女。
ずっと側にいてくれないかい?」
信玄は正直に自分の刀と、
泉の女神を攫っていきましたとさ。
ーおしまいー