第23章 イケメン童話:金の撒菱銀の撒菱(佐助)
ある日、
正直で真面目な眼鏡の青年が、
森の泉に誤って撒菱(マキビシ)を落としてしまいました。
「撒菱がないと敵の行手を阻めないっ…
謙信様達を援護どころか、危険に晒してしまうかもしれない…」
青年は困ってしまいます。
透けるほど清らかな泉の水。
覗いてみるけれど、底は見えない。
青年が途方に暮れていると、
突然、泉が輝きます。
眩しくて目を瞑り、開けてみると、
女神か天女か……
美しい女性が泉の上に立っていました。
「佐助、貴方の落した物はこの金の撒菱ですか?」
「いいえ」
「では、この銀の撒菱ですか?」
「いいえ、ただのマキビシです」
正直に答えました。
すると、女神はニッコリと笑って言いました。
「正直者の貴方にはこの金の撒菱を授けましょう」
けれど、佐助はいいます。
「いいえ、俺は金も銀も必要ありません。
俺は普通のマキビシであればそれでいいのです」
女神が授けると言った高価な金の撒菱をキッパリと断ります。
「正直者の佐助。
貴方の望むモノをなんでも授けましょう。
申してご覧なさい」
感激した女神は佐助にそう言いました。
「では…金銀は重いので、アルミかカーボンの撒菱が欲しいですね。
出来れば、どんぐり位の大きさでお願いします」
いたって至極真面目な佐助。
「アルミ…カーボン…」
この時代にそんな素材の物は存在しない。
女神は困って泣いてしまいましたとさ。
ーおしまいー