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第7章 ▼華ニハ蜜ヲ△ *明智光秀ルート*
「…三成くんに、書状を届けた時は…」
光秀に向かって、ハナが右手を翳して見せる。
「手を握らせてほしいと頼まれました」
光秀の瞳が、静かにハナの翳した手を見た。
同じように、ハナもまた、自分の右手を見つめていた。
「秀吉さんに届けた時は、頭を撫でてもらいました」
秀吉の触れた個所を確かめるように、ハナの右手が、自身の頭に触れる。
そうして、再現するかのようにそっと自分で自分の髪を梳いて見せる。
「家康の、所では――…っ」
家康の名前を口にした途端、喉の奥に、大きなつかえができたように言葉が詰まる。
無意識に、ハナの右手が、自身を庇うように首筋に触れた。
それを光秀は、やはり静かに見ていた。
「―――今、ようやく…信長様のお考えが、分かったような気がします…」
「ほう…お前にあの方のお考えがわかるというのか?」
「全部ではないです!…けど、信長様の書状は全て、私に触れるように促すもの、というのは合ってますよね?」
光秀の顔に、感情のない笑みが浮かぶ。
静かに首を傾げて見せた。
「なぜ、そう思う?」
「…紅蜜華です」
ポチャン、と。
ハナの髪から雫が落ちて、湯の水面に波紋ができる。
「家康から聞きました…その、効用も…」
ハナが顔を上げ、光秀の瞳を見つめる。
光秀もまた、逸らすことなくハナの瞳を見つめ返した。
「光秀さんは、紅蜜華のことを知ってたんですね」
「…紅蜜華を調べるよう、家康に頼んだのは、俺だからな」
それなら、と。
小さく呟き、ハナは顔を伏せて続けた。
「私に触れてくれないのは…どうしてですか?」
光秀の瞳が、白銀の奥へと消える。
そうしてその表情をわからなくした。
「……小娘」
「名前で、呼んでくれないのは…なぜですか?」