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【ヒロアカ】Don't touch me.【轟】

第7章 Catalyst



一限終了のチャイムの音が響く。
私は机の上を片付けて、次の授業の用意をした。

「まりちゃん!職場体験の事務所決まった?」
「うん!ヒーローヤマゴンのところにしたよ」
「ヤマゴン……聞いたことあるような、無いような……」
「お茶子ちゃんはガンヘッドのところだよね」
「そうだよ!お互いがんばろ!」

お茶子ちゃんと二人で笑い合う。ふとお茶子ちゃんの前の席の飯田くんを見れば、その目はどこか遠くを見据えていた。

「飯田くんはどこにしたの?」

いても立ってもいられなくなって問いかけると、飯田くんはぱっと顔を上げ、貼り付けたようないつもの表情で答えた。

「俺はノーマルヒーローマニュアルの事務所に決めたよ」

マニュアル──東京の、それも保須市に事務所を構えるヒーローだ。世間はヒーロー殺し、ステインの話題で持ち切り。インゲニウムの次に狙われるヒーローは誰かという記事に載っていた。

飯田くんは保須に行き、ステインを追う気だろうか。不安を感じ覗き見た彼の瞳の色はよく知ったものだった。

「ほら、そろそろ授業が始まるぞ!席に着こう」
「……うん」

インゲニウムはヒーロー活動が出来ない程の重症らしい。胸にずしん、と重いものがのしかかる。
私から飯田くんにかける言葉は、何も見つからなくて。小さく頷いて席に戻った。





「あ!爆豪くんベストジーニストのとこなんだね」
「うっせえ。見んな」

昼休み。職場体験の希望届けを職員室に出しに行く途中、爆豪くんと一緒になった。ちらりと見えた用紙には私が個性柄憧れてるヒーロー事務所の名が書かれていた。

ベストジーニストはNo.4ヒーローだ。
繊維を操る個性……その素早く繊細な技術は本当に凄い。私の綿だって繊維だし、彼のように操れるようになれたらなと思う。
それに彼の個性で私の綿が操れるのかもちょっと興味があった。

「でも爆豪くんの雰囲気とちょっと違うような?もっと激しい感じの所に行くのかと思ってたよ」
「馬鹿にしてんのか?あぁ!?」
「ち、違うよ。ベストジーニストってほら、きっちりしてるから……」
「はっ俺だってきっちりしとるわ」
「うーん……」
「何だその返事は。舐めとんのか」

怒った口調だけど今日の彼は落ち着いている。私は顔色を窺いながら、爆豪くんから二歩離れた隣を歩いた。


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