第5章 Fight
戻ったら二戦目は既に終了していた。
漂う冷気にふる、と身震いし目の前に迫る、高く聳え立つ氷を見上げて立ち竦んだ。
穏やかだった彼の激情。
胸に突き刺すような痛みが走り、目の奥が熱を持った。悲しくて、悔しかった。
それでも私は、轟くんなら乗り越えられると信じて待つんだ。笑って、どんな時でも居場所でいられるように。
観客から瀬呂くんにドンマイコールが上がる。
「……轟くん」
呟いた声は喧騒に溶けて消えた。
氷の主は左手を翳し、自らが生み出した氷をゆっくりと溶かしていく。その姿は酷く悲しげで、私はきつく口を結んだ。
その後、塩崎さん対上鳴くんの試合は、塩崎さんの圧勝。
また、飯田くん対発目さんの試合はほぼ発目さんの『ベイビー』披露大会だったが、飯田くんの勝利に終わった。
第五試合は青山くんと三奈ちゃんだ。三奈ちゃんは持ち前の運動神経で青山くんのビームを華麗に躱す。最後は青山くんのベルトを溶かし、とどめのアッパーで戦闘不能にした三奈ちゃんが勝利した。
その後、先制猛攻で常闇くんが百ちゃんに勝利、切島くんと鉄哲くんは互角の戦いを繰り広げ引き分け。回復後、簡単な勝負にて決着を付けることになった。
ふと、隣の席を見るとそこにはお茶子ちゃんの代わりに汗をかいた飲み物が鎮座していた。次の試合、お茶子ちゃんは爆豪くんと対戦する。
とても怖いだろうと思う。
実際、障害物競走で受けた爆破は威力も衝撃もかなりのものだった。あれを何発も受けたらと思うと背筋が冷える。
二人の試合は結果でいうと爆豪くんの勝利に終わった。しかし、お茶子ちゃんも立派に爪痕を残した。
策が破られようとも最後まで諦めずに立ち向かったんだ。爆豪くんが一瞬足りとも油断しなかったほど──。
倒れても尚、這いつくばって戦おうとする、そのかっこいい姿に思わず涙ぐんでしまった。
全てのブロックの一回戦が終了し、小休憩を迎える。
みんな、すごい。
私もみんなみたいに、もっと強くなりたい。
──強くなるんだ。
丸く青い空が私たちを見守っている。
今、二回戦が始まろうとしていた。