第5章 Fight
トーナメントは尾白くんとB組の庄田くんが棄権して、鉄哲くんと塩崎さんが繰り上がり16名で行われることとなった。
「あ!紫の!」
トーナメント表がモニターに映し出されてすぐ、あの紫髪の人を見つけた。しかし、その人に声をかけようとしたらふわふわした何かに口を塞がれた。
「っ綿世!何してるの」
「ど、どうしたの?」
ふわふわは尾白くんの尻尾の毛先だった。気を使って尻尾本体が触れないようにしてくれたところに一人感動する。
何があったのかと首を傾げると、尾白くんは苦い顔で静かに言った。
「アイツに話しかけない方がいい」
彼は普通科の心操人使くんというらしい。トーナメント一戦目で緑谷くんと対決する人だ。どうも、彼の問いかけに答えると記憶を失い操られてしまうらしい。だとしたら相当強い個性だと思う。
戦わずして敵を確保出来てしまう平和的ヒーロー。なんだか映画の主人公みたいだ。
試合が終わったら会いに行こう。普通科の席の近くにいたら会えるだろう。
レクリエーションが始まる。私はポンポンを振って大玉転がしや借り物競争に勤しむ男子達を応援した。
これが終わったらトーナメント──轟くんは瀬呂くんとだ。姿の見えない紅白の髪を思い浮かべて、そっと皆の輪から抜け出した。